「うちの子、プログラミングばかりやっているけれど、それで食べていけるの?」。お子さんがパソコンに向かう時間が増えるほど、その不安は大きくなりますよね。
私も子を持つ親として、この問いを国の資料で確かめました。経済産業省・厚生労働省・文部科学省・IPA(情報処理推進機構)の公表資料を、都合のいい部分だけ切り取らずに読みました。先に結論を書きます。
「IT人材が不足しているから就職に困らない」とは、公的資料を読むと言えません。同じ資料に「条件が変われば需要と供給は均衡する」と明記されているからです。ただし、道が無いわけでもありません。
この記事は、夢を見せる記事でも、不安を煽る記事でもありません。公的データを両側から並べて、ご家庭が自分で判断できる材料をそろえることだけを目的にしています。推計(試算)なのか実績(実際に起きた数字)なのかも、毎回はっきり分けて書きます。
なお、プログラミングを学べる環境は学校ごとに大きく違います。比べる物差しとして、ネットの学びとIT系の課外授業で知られるN高等学校の資料を先に手元に置いておくと、この記事の数字が具体的に読めるようになります。
結論|「不足しているから就職できる」は成り立たない
いちばん大事なところなので、最初に書きます。ネットでよく見る「IT人材が足りないから、プログラミングができれば就職に困らない」という説明は、根拠になっている資料をきちんと読むと成り立ちません。
理由は3つあります。
- 不足の数字は「推計」であって実績ではない。前提条件を変えると数字が大きく動く
- 同じ資料に「生産性が一定以上上がれば需要と供給は均衡する」と書かれている
- 不足しているのは「先端」の分野で、従来型は逆に余る試算が出ている
つまり「IT=安泰」ではありません。ただ、ここで話を終わらせると今度は不安だけが残ります。反対側の数字もあります。IT系の職種は賃金の実績値が全産業平均より高く、高卒で情報通信業に就職している人も現に毎年千人以上います。2040年の国の推計では、工業科の高卒人材は91万人不足という結果も出ています。
要するに、「保証はないが、道はある」。これがこの記事の全体像です。ここから一つずつ、数字と出どころを確認していきます。
よく見る「IT人材不足」の数字の正体
まず、いちばんよく引用される数字から見ます。出どころは経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(平成31年〈2019年〉4月公表)です。
2030年45万人不足は「中位シナリオの試算値」
この調査によると、IT人材の需給ギャップ(不足数)の試算値は、2025年で約36万人、2030年で約45万人です。
ここで大事なのは、これがある条件を置いたうえでの計算結果だということです。前提は「IT需要の伸びが年2.7%(中位シナリオ)」「労働生産性の上昇率が年0.7%」。この2つの数字を変えると、答えも変わります。
需要側のシナリオは3つ用意されています。高位が年4.4%、中位が年2.7%、低位が年1%。2030年の需要規模でいうと、高位192万人・中位158万人・低位130万人と、かなりの幅があります。
ネット記事でよく見る「2030年に79万人不足」という数字は、このうち高位シナリオのものです。いちばん需要が伸びた場合の数字だけを、シナリオ名を書かずに使っている記事が少なくありません。数字を見たら「どのシナリオですか」と一度立ち止まる。それだけで情報の見え方が変わります。
ちなみに供給側、つまり働き手の人数は、2018年の103万人から2030年には113万人へ増える試算になっています。「人が減っていくから足りない」という単純な話でもないのです。
【核心】同じ資料に「均衡する」と書かれている
そして、この記事でいちばんお伝えしたい一文がここです。同じ資料の中に、こう書かれています。
年3.54%の労働生産性上昇を実現した場合には、2030年時点のIT人材の需要と供給は均衡することが見込まれる——。
均衡する、というのは「不足が消える」ということです。つまり不足は前提条件しだいだと、国の資料自身がはっきり書いているわけです。
生産性が上がるとはどういうことか。身近な言い方をすれば、「1人でできる仕事の量が増える」ということです。ツールが良くなったり、自動化が進んだりすれば、同じ仕事を少ない人数でこなせるようになります。すると必要な人数は減ります。
お気づきかもしれませんが、これはまさに今、生成AIによって起きている変化の方向です。だからこそ「不足しているから安泰」という説明を、そのまま信じるのは危ないのです。
なお、この2019年調査の後継となる新しい需給推計は、2026年8月時点では公表を確認できませんでした。7年前の前提で作られた推計だ、という点も頭に置いておいてください。
出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」調査報告書 概要(平成31年4月)
【重要】不足しているのは「先端」のほう
もう一段、深いところを見ます。同じ経産省の調査には、IT人材を2種類に分けた試算があります。
- 先端IT人材=AI・ビッグデータ・IoTなど、新しい技術を扱う人材
- 従来型IT人材=これまでの受託開発や運用保守などを担う人材
2030年・中位シナリオで、リスキリング(学び直し)の率が1%にとどまった場合の試算がこうです。
先端IT人材は55万人の不足。一方、従来型IT人材は10万人の供給過剰——つまり余るという結果になっています。
同じ「IT人材」という言葉の中で、足りない側と余る側が同時に存在する。これが試算の中身です。
ここから読み取れることは、はっきりしています。ITの仕事に就けば安泰なのではなく、仕事の中身が入れ替わっていくということです。
親としては、少し複雑な気持ちになる結果かもしれません。でも私は、この数字はむしろ心強いと感じました。なぜなら、「何を学ぶか」と「学び続けるか」で結果が変わると言っているのと同じだからです。生まれ持った条件ではなく、選び方と続け方の話です。
お子さんが今プログラミングを触っているなら、それは「入り口に立っている」状態です。そこから先どちらの方向に進むかは、これから決められます。
2040年の推計では「高卒」がひとくくりではない
次に、もっと新しい資料を見ます。経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月)です。ここには、進路を考えるうえで見逃せない数字が並んでいます。
学歴別のミスマッチ推計
2040年時点で、どの学歴の人材が足りなくなり、どの学歴が余るのか。国が試算した結果がこちらです。すべて推計値である点を先にお断りしておきます。
| 区分 | 2040年の過不足(推計) | 意味 |
|---|---|---|
| 高卒(工業科) | −91万人 | 不足 |
| 高卒(普通科) | +32万人 | 余剰リスク |
| 大卒・院卒(理系) | −124万人 | 不足 |
| 大卒・院卒(文系) | +76万人 | 余剰 |
マイナスは「足りない」、プラスは「余る」を意味します。
注目してほしいのは、同じ「高卒」でも、工業科と普通科で正反対の結果になっていることです。工業科は91万人の不足、普通科は32万人の余剰リスク。学歴の段階ではなく、何を学んだかで分かれています。
この数字が示していることを、正直に書きます。「高校でプログラミングを少し学んだ」というだけで有利になるとは言えません。普通科でパソコンに触れていた、というレベルの話であれば、推計上は余剰側(高卒・普通科+32万人)に含まれます。
一方で、専門的な学びの方向に踏み込んだ場合は、見通しがはっきり違うのも事実です。工業科や情報系の学びを軸にした場合、推計上は不足側に位置します。
ここが親として考えどころです。お子さんの「プログラミングが好き」を、趣味のまま置いておくのか、学びの軸として育てるのか。推計はその選択の重さを示しています。
出典:経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月)
実際の給料はいくらか|厚労省の実績値で見る
ここまでは推計の話でした。今度は実績値を見ます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2025年6月分の賃金、令和8年3月24日公表)です。
【注意】統計に「SE」「プログラマ」という区分はない
数字の前に、大事な注意点を1つ。この調査には「システムエンジニア」「プログラマ」という職種区分が存在しません。令和2年の調査から名称が変わり、現在は下の表の名前になっています。
「SEの平均年収は◯◯万円」という記事を見かけたら、その数字がどの区分を指しているのかを確認してください。統計上の名前と一致していないことがあります。
| 職種(統計上の名称) | 平均年齢 | 所定内給与(月) | 年間賞与等 |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 506.8千円 | 2,385.2千円 |
| ソフトウェア作成者 | 37.1歳 | 356.8千円 | 1,095.1千円 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 42.2歳 | 379.1千円 | ― |
産業全体で見ると、情報通信業の所定内給与は406.0千円。全産業計は340.6千円ですから、産業としては平均より高い水準にあるのは事実です。
ただし表の中でも差があります。システムコンサルタント・設計者とソフトウェア作成者では、月の給与で150千円ほど違います。「IT業界だから高い」ではなく、どの役割に就いているかで大きく違うということです。
学歴別の差は、正直に書きます
同じ調査の学歴別データ(全産業・男女計)も見ておきましょう。ここは目をそらさずに書きます。
| 学歴 | 所定内給与(月) |
|---|---|
| 高校 | 297.2千円 |
| 専門学校 | 313.7千円 |
| 高専・短大 | 321.2千円 |
| 大学 | 396.3千円 |
| 大学院 | 517.4千円 |
高校卒と大学卒で、月におよそ100千円の差があります。これは全産業をならした実績値で、動かしようのない数字です。
ここで正直に付け加えなければならないことがあります。IT職種に限った学歴別の賃金データは、公的なクロス集計を確認できませんでした。つまり「IT業界なら学歴差が小さい」とも「同じように差がある」とも、公的資料からは言えません。
ネット上には「IT業界は実力主義だから学歴は関係ない」という説明があふれていますが、それを裏づける公的な統計は見つかりませんでした。この記事では書けない、というのが誠実な答えです。
高卒でIT業界に入る道はあるか|実数で見る
では実際に、高校を出てそのままIT業界へ進んでいる人はどれくらいいるのでしょうか。文部科学省「令和7年度学校基本調査」の確定値(令和6年度間の卒業者)で確認しました。
- 全日制・定時制の新規高卒就職者127,501人のうち、情報通信業は1,218人(約1.0%)。専門的・技術的職業従事者は11,026人(8.6%)
- 通信制課程の就職者12,989人のうち、情報通信業は225人(約1.7%)。専門的・技術的職業従事者は931人(7.2%)
この数字をどう読むか。両側から書きます。
まず、道は現に存在します。毎年千人以上が、高校卒業と同時に情報通信業へ就職しています。ゼロではありません。通信制課程からも225人が進んでいます。割合でいえば通信制のほうがわずかに高いくらいです。
一方で、その道は細いのも事実です。1〜2%というのは、100人のうち1人か2人という規模です。「高卒からITへ」は、多数派が通る道ではありません。
だからこの記事では「学歴不問」とは書きません。実際の数字が、そう言える水準にないからです。
ただ、細い道を通った1,218人が「特別な才能を持っていた」わけでもないはずです。多くは、在学中に何かしらの形(学科での学び、資格、作品)を持っていたと考えるのが自然です。次の章はまさにその話です。
出典:文部科学省「学校基本調査」(令和7年度確定値)
高校生でも取れる資格|受験資格と合格率の実際
在学中に形にできるものとして、まず思い浮かぶのが資格です。IPA(情報処理推進機構)の国家試験について、実績値で確認しました。
ITパスポート試験|受験資格はないが、高校生の合格率は24.9%
ITパスポート試験は、公式のよくある質問に「受験資格は特段ありません」と明記されています。年齢や学歴の条件なしに、誰でも申し込めます。
令和7年度の実績はこうです。受験者271,352人、合格者132,012人、合格率48.6%。おおよそ2人に1人が受かる試験です。
ところが、高校生に限ると景色が変わります。高校からの応募14,693人に対し、合格3,461人。合格率は24.9%です。全体の約半分の水準になります。
ちなみに小・中学校からも応募500人・合格162人という実績があります。中学生で受かっている子も、現にいるということです。
基本情報技術者試験|全体38.3%、高校生は約31.1%
もう一段上の基本情報技術者試験は、令和7年度で受験147,186人・合格56,370人、合格率38.3%でした。
高校からの応募は3,511人、合格1,032人で合格率は約31.1%。内訳は情報系792人中227人、商業系1,298人中383人、工業系658人中194人、普通系その他763人中228人となっています。
なお、基本情報技術者試験について「受験資格なし」と明示した公式の文言は確認できませんでした。ただし、上のように小中高生の受験・合格実績が統計に載っています。
2つの試験に共通して言えることを、まとめます。「誰でも受けられる」ことと「誰でも受かる」ことは違います。高校生の合格率は、どちらも全体を下回っています。
それでも私がこの章を書いたのは、資格が高校在学中に形にできる数少ない実績だからです。学校名でも成績でもなく、外部の物差しで「できる」と示せるものは多くありません。そして、受験資格に年齢の壁がない。この2点は、進路を早めに考えたい家庭にとって大きな意味があります。
出典:IPA 情報処理推進機構「情報処理技術者試験」(統計資料・よくある質問)
【正直な話】通信制の進路データを直視する
この記事でいちばん書きにくく、しかし書かなければ意味がない章です。文部科学省「令和7年度学校基本調査」確定値(令和6年度間卒業者・令和7年5月1日現在)から、通信制課程と全日制・定時制の進路を並べます。
| 区分 | 大学等進学 | 就職者の割合 | 「左記以外の者」 |
|---|---|---|---|
| 通信制課程(卒業者91,809人) | 28.6% | 14.1% | 26.1% |
| 全日制・定時制(卒業者929,157人) | 62.6% | 13.7% | 4.7% |
数字をそのまま書きます。通信制課程の大学等進学は28.6%。全日制・定時制は62.6%。倍以上の差があります。
そして「左記以外の者」——家事手伝いや進路未定が明らかな人などを含む区分——が、通信制では26.1%、23,995人。全日制・定時制の4.7%と比べると、5倍を超える開きです。
この差を、私は隠しません。通信制を検討しているご家庭に対して、都合の悪い数字を伏せるのは不誠実だと思うからです。
補足として、公私で違いもあります。公立は大学等進学17.1%・就職18.5%、私立は大学等進学30.0%・就職13.7%。同じ通信制でも一様ではありません。なお、専修学校専門課程への進学は通信制で21,013人=22.9%あり、進学の受け皿として大きいことも付け加えておきます。
この数字から、何を引き出すか
ここで大事なのは、この数字を「通信制はダメだ」と読むことではありません。それでは何も前に進みません。
この差が何を意味しているかというと、通信制は「レールが自動では敷かれない」ということです。全日制の高校には、進路指導のスケジュール、模試、周りの空気といった、放っておいても進路を考えさせる仕組みがあります。通信制は時間の自由がある代わりに、その仕組みが弱い。だから結果に幅が出ます。
裏を返せば、時間の自由がある分、在学中に何を積んだかで差が大きく開くということでもあります。全日制の子が授業と部活で埋まっている時間を、別のことに使えるからです。
だから、プログラミングの話がここでつながります。具体的に積めるものは、たとえばこの3つです。
- 資格:ITパスポート、基本情報技術者。年齢の壁がなく、外部の物差しで示せる
- 作品:作ったアプリ、Webサイト、ゲーム。動くものは説明が要らない
- 記録(ポートフォリオ):何を作り、どこでつまずき、どう解決したかを残したもの
3つ目を軽く見ないでください。就職でも進学でも、見られるのは「作れる人かどうか」より「続けられる人かどうか」であることが多いからです。半年前より上手くなった記録は、それ自体が証拠になります。
通信制の進路が不利かどうかについては、通信制高校は就職・進学で不利になるのかをまとめた記事でも詳しく扱っています。
AIはプログラミングの仕事を奪うのか
親御さんが今いちばん気にされているのは、たぶんこれですよね。「せっかく覚えても、AIに取られるのでは」。ここも両側の数字を出します。
「奪われない」側の推計
経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月)によると、2040年時点で「AI・ロボット等の利活用を担う人材」の需要は782万人、供給は443万人。差し引き約339万人の不足という推計です。
AIが広がるほど、AIを使いこなす側の人手は足りなくなる。この方向の試算です。
「奪われる」側の推計
同じ資料には、生成AIについて「定型スキルで代替が大幅に進む」との言及があります。
影響がはっきり出るのは事務型の職種です。生成AI等の進展を仮定した場合、事務型職種の需要は1,530万人から680万人へと大きく減る試算になっています。2040年の事務職は約437万人の余剰という推計です。
「定型」の作業が置き換わる、という点は、プログラミングの世界にも当てはまります。決まった型のコードを書くだけの仕事は、影響を受けやすい側です。
よく引用される「9割以上のICT職種」の話
IPAの「DX動向2025 ― AI時代のデジタル人材育成」(2025年10月9日公開のディスカッションペーパー)には、「9割以上のICT職種で主要スキルの過半がAIによって変化すると予測し、今後10年間で全世界9,500万人にリスキリングを実行する目標」という記述があります。
この数字はよく引用されますが、扱いに注意が必要です。これはIPA自身の統計ではありません。米国のAI-Enabled ICT Workforce Consortium(民間企業の連合体)による予測・目標値を、IPAが紹介したものです。日本の実態を測った調査ではない、という前提で読んでください。
もう1つ正直に書いておきます。「プログラマは何歳で引退するのか」といった、スキルの陳腐化を直接示す日本の公的統計は確認できませんでした。ネットで見かける「エンジニア35歳限界説」のような話に、公的な裏づけは見つからないということです。
結論|「安泰」も「終わり」も、どちらも切り取り
並べてみると分かります。AIを使いこなす側は339万人不足の推計。定型作業の側は代替が進むとの言及。同じ資料の中に、両方が書かれています。
「AIがあるからIT人材は安泰」も、「AIが来るからプログラミングは終わり」も、どちらも都合のいい半分だけを取り出した話です。
現実的な読み方は、こうなります。仕事は消えるのではなく、中身が入れ替わる。だから問題は「ITを選ぶかどうか」ではなく、「変化に合わせて学び直せるかどうか」です。
そして、その学び直す力は、実はプログラミングを触っているうちに育つ力でもあります。新しい言語やツールが出るたびに調べて試す。あの行動そのものが、変化に対応する練習です。
親としてどう考えるか|4つの整理
ここまでの数字を、進路の判断に使える形に整理します。煽らず、現実的に書きます。
①「就職の保証」ではなく「選択肢を1つ増やすもの」
ここまで見てきた通り、プログラミングは就職を保証しません。不足の推計は前提しだいで消えますし、従来型は余る試算も出ています。高卒でIT業界に入る割合も1〜2%です。
ただし、選択肢は確実に1つ増えます。何も持たない状態と、作ったものや資格がある状態では、進路の会話の中身が変わります。保証ではなく、持ち札。この位置づけが正確です。
②本人が面白がっているかが最優先
需給の推計は、7年後・14年後の話です。正直に言えば、そこまでの予測が当たるかどうかは誰にも分かりません。実際、2019年の推計は生成AIの登場前に作られたものです。
不確かな未来予測より確かなのは、本人が今それを面白がっているかどうかです。面白いから続く、続くから上手くなる、上手くなるから形になる。この順番は、市場がどう動いても変わりません。
逆に、「食べていけるから」という理由だけで始めさせたものは、たいてい続きません。私自身、子どもを見ていて何度も実感しました。
③在学中に「形に残るもの」を作れるかで差がつく
通信制の進路データが示していたのは、まさにこの点でした。時間の自由がある分、何を積んだかが結果に直結します。
形に残るものとは、資格・作品・記録です。頭の中の理解は伝わりませんが、動くアプリと合格証は伝わります。3年間で1つでも積めれば、進路の会話は具体的になります。
④進学の道も閉じない
最後に、これが一番お伝えしたいことかもしれません。高校でプログラミングを学ぶことは、進学をあきらめることではありません。
2040年の推計では、大卒・院卒(理系)が124万人不足でした。学歴別の賃金でも、大学卒は高校卒を月100千円ほど上回っています。情報系の学部や専門学校という道は、しっかり残しておく価値があります。
むしろ在学中の作品や資格は、総合型選抜など進学の場面でも材料になります。「就職か進学か」ではなく、どちらにも使える持ち札を作ると考えるのが現実的です。
なお、2025年から大学入学共通テストに「情報Ⅰ」が加わりました。この変化も進路に関わるので、情報Ⅰが入試科目になった話をまとめた記事もあわせてご覧ください。
当サイトが基準に置くN高|学校ごとに体制は違う
ここまでの整理を、学校選びに落とします。前提として押さえていただきたいのは、プログラミングを学べる体制も、進路実績も、資格取得の支援も、学校ごとに大きく違うということです。
「通信制高校ならプログラミングが学べる」わけではありません。授業に組み込まれている学校、課外授業として用意している学校、別料金のコースにしている学校、特に用意のない学校。全部あります。
そしてここが厄介なのですが、この違いはWebサイトを眺めているだけでは正確に分かりません。資料を取り寄せて、費用の内訳と一緒に確認するのが確実です。
当サイトが比較の基準に置いているのはN高等学校です。理由は、この記事のテーマとの相性がいいからです。
- 課外授業として、追加費用なくプログラミングを始められる設計になっている
- ITパスポート対策の講座が「+ONE授業」に用意されている(この記事で見た通り、受験資格に年齢の壁がない試験です)
「まず触ってみて、合うかどうかを見る」という段階のお子さんにとって、追加費用なしで始められる入り口があるのは大きい。合わなければやめればいいからです。
誤解のないよう書きますが、他の学校が劣るという話ではありません。週5日の通学で先生と対面で学びたい子には、また別の答えがあります。基準を1つ持っておくと、他校の資料を見たときに「ここは何が違うのか」が切り分けられる——そのための基準です。
N高以外も含めて見比べたい場合は、通信制高校のプログラミングコースを比較した記事もあわせてご覧ください。
N高のプログラミング環境については、N高でプログラミングをどう学べるかをまとめた記事で詳しく扱っています。
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資料が数校ぶん並ぶと、「プログラミングをどこまで学べるのか」「費用は別途かかるのか」がテーブルの上で比べられます。そのうえでお子さん本人の反応を見てください。親が良いと思った学校と、本人がページをめくり続けた学校は、意外と一致しません。
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- 通信制高校のプログラミングコース比較|学校ごとの体制と費用の違い
- N高等学校とはどんな学校か|仕組みと学費の基礎
よくある質問
IT人材が不足しているなら、就職には困りませんか?
そうとは言えません。不足の数字(2030年45万人=中位シナリオ)は推計であり、根拠となる経済産業省「IT人材需給に関する調査」(平成31年4月公表)自身が、年3.54%の労働生産性上昇が実現すれば2030年時点で需給は均衡すると見込んでいます。
さらに同じ資料の試算では、リスキリング率1%の場合、先端IT人材は55万人不足する一方、従来型IT人材は10万人の供給過剰になります。「ITなら安泰」ではなく「中身が入れ替わる」と読むのが正確です。
高卒でエンジニアになれますか?
道はありますが、細い道です。文部科学省「令和7年度学校基本調査」確定値によると、全日制・定時制の新規高卒就職者127,501人のうち情報通信業に就職したのは1,218人で、約1.0%。通信制課程では就職者12,989人のうち225人で約1.7%です。
「不可能」ではありませんが、多数派の進路ではありません。また、IT職種に限った学歴別の賃金データは公的には確認できず、「学歴は関係ない」と断言できる根拠も見つかりませんでした。
IT系の資格は高校生でも取れますか?
ITパスポート試験は公式に「受験資格は特段ありません」と明記されており、高校生も受験できます。実際に令和7年度は高校から14,693人が応募し、3,461人が合格しています。
ただし合格率は、全体48.6%に対して高校生は24.9%。基本情報技術者試験も全体38.3%に対し高校合計で約31.1%と、いずれも全体より低い水準です。「受けられる」と「受かる」は別だと考えて準備してください。
AIでプログラミングの仕事はなくなりますか?
両側の推計があります。経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月)では、AI・ロボット等の利活用を担う人材は2040年に約339万人不足という推計が示されています。一方、同じ資料には生成AIによって「定型スキルで代替が大幅に進む」との言及があり、事務職は約437万人の余剰と試算されています。
また、IPAが紹介する米国AI-Enabled ICT Workforce Consortium(民間企業連合)の予測では、9割以上のICT職種で主要スキルの過半がAIによって変化するとされています(※IPA自身の統計ではありません)。「安泰」も「終わり」も、どちらも一方の数字だけを取り出した見方です。
【今夜できる一歩】判断材料を3つそろえる
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 「IT人材不足だから就職に困らない」は成り立たない。同じ資料に「生産性が年3.54%上がれば均衡する」と明記(2019年公表・推計)
- 不足しているのは先端側。従来型IT人材は10万人の供給過剰という試算もある
- 2040年推計では高卒(工業科)−91万人=不足/高卒(普通科)+32万人=余剰リスク。「高卒」はひとくくりではない
- 賃金の実績値は、システムコンサルタント・設計者506.8千円/ソフトウェア作成者356.8千円。ただし学歴別では高校297.2千円 vs 大学396.3千円の差がある
- 高卒からIT業界への道は約1〜2%。あるが細い
- 通信制の進路は大学等進学28.6%・「左記以外の者」26.1%。全日制定時制(62.6%・4.7%)との差は事実
- だからこそ、在学中に資格・作品・記録という形を積む意味がある
私がこの記事を書きながら思ったのは、数字は怖いものではないということでした。怖いのは、都合のいい半分だけを見せられて判断してしまうことです。
「不足しているから安心」と言われて安心するのも、「AIに取られる」と言われて不安になるのも、どちらも同じ構造です。両側を並べてしまえば、判断はご家庭のものになります。
【今夜できる一歩】は3つです。1つ、お子さんに「何を作ってるの?」と聞いてみる。面白がっているかどうかが、いちばん確かな判断材料です。2つ、ITパスポートの公式サイトを一緒に開いてみる。受験資格に年齢の壁がないことは、本人にとっても発見になります。3つ、比較の基準として通信制高校の資料を1部取り寄せておく。
資料請求は無料で、入学の義務もありません。プログラミングを学べる環境がどこまで用意されているかは、学校ごとに本当に違います。手元に紙が1部あるだけで、お子さんとの進路の話は具体的になります。
お子さんの「好き」を、保証のない未来に賭けさせるのでもなく、無駄だと切り捨てるのでもなく。数字を見たうえで、持ち札の1枚として育てていってあげてください。
