「通信制高校なら安いと聞いたけれど、うちの収入で本当に払えるんだろうか」。ひとり親でお子さんの進路を考えるとき、この不安は避けて通れないものだと思います。学費の数字を見て、そっとページを閉じた夜があった方もいるかもしれません。
私も子を育てている親として、この記事は官公庁の一次情報だけを突き合わせて書きました。先に結論を言います。
使える制度は1つではありません。授業料は就学支援金、教材費や通信費は奨学給付金、入学時のまとまったお金は無利子の貸付、生活保護世帯には就学費。この4つを重ねて考えると、見え方が変わります。
ただし、この記事では「実質無料」とは書きません。制度でまかなえない費用も確かにあるからです。使える制度と、対象外になる費用の両方を正直に並べます。そのうえで、ご家庭の状況に合わせて判断していただければと思います。
金額はすべて令和8年度(2026年度)の公表内容です。制度は年度で変わりますし、自治体によって上乗せの中身も違います。最終確認はお住まいの自治体と学校でお願いします。
なお、通信制高校の学費が実際にどう提示されるのかを見ておくと、制度の話が一気に具体的になります。当サイトが比較の基準に置いているN高等学校は、取り寄せた募集要項に学費の内訳が金額まで書かれているので、資料を1部手元に置いておくと計算しやすくなります。
結論|お金の話は「4階建て」で考えると整理できる
制度の情報が分かりにくいのは、それぞれ別の役所・別の窓口・別の申請書で運用されているからです。バラバラに調べると「結局いくら足りないのか」が最後まで見えません。
そこで、まず建物のように積み上げてイメージしてみてください。
- 1階:高等学校等就学支援金=授業料にあてる(返済不要)
- 2階:高校生等奨学給付金=授業料以外(教科書・教材・通信費など)にあてる(返還不要)
- 3階:母子父子寡婦福祉資金貸付金=入学時のまとまった出費にあてる(無利子の貸付)
- 4階:生活保護世帯の生業扶助「高等学校等就学費」=生活保護を受けている世帯の高校費用(通信制も対象)
そして建物の土台に、児童扶養手当があります。これは学費の制度ではなく生活費の手当ですが、高校生年代でも受け取れる制度です。ここを知らずに「高校生になったら切れる」と思い込んでいる方が少なくありません。
1階と2階は返さなくていいお金、3階は返すけれど利息がつかないお金、4階は生活保護世帯向けの上乗せ。性質が違うので、同じ土俵で比べる必要はありません。使えるものは重ねて使うのが前提の設計です。
ここで一つだけ、先に伝えておきたいことがあります。制度を使うことは、誰かに引け目を感じるようなことではありません。税金の使い道としてあらかじめ用意されている枠です。順番に見ていきましょう。
①就学支援金|2026年度から所得制限が撤廃された
1階部分、授業料にあてる制度からです。
令和8年度から所得制限がなくなった
高等学校等就学支援金は、授業料にあてるために国から支給される返済不要のお金です。生徒本人や保護者に直接振り込まれるのではなく、学校が受け取って授業料に充当する仕組みになっています。
大きな変更点として、令和8年度(2026年度)から所得制限が撤廃されました。以前は世帯年収の目安で線が引かれていましたが、その線がなくなりました。「うちは対象外かも」と諦めていた方も、まず申請してください。
私立通信制の上限は年337,200円
支給の上限額は、学校の種類によって違います。
| 学校の種類 | 年間の支給上限額 |
|---|---|
| 私立の全日制 | 457,200円 |
| 私立の通信制 | 337,200円 |
| 公立(全日制) | 118,800円 |
通信制高校でよくある単位制の場合は、単位数で計算します。私立通信制は1単位あたり13,668円、公立通信制は1単位あたり336円です。年間30単位まで・通算74単位まで・支給期間は48月までという上限がついています。
3年で卒業する場合、単純計算で1年あたり25単位前後の履修になることが多いので、年30単位の枠は通常の履修なら足ります。ただし、留年や転入編入で在籍が長くなると48月の期間上限が効いてくる場合があります。
【注意】337,200円は「上限」であって、もらえる額ではない
ここを取り違えると資金計画がずれます。337,200円はあくまで上限で、実際の授業料までしか支給されません。
たとえば授業料が年20万円の学校なら、支給されるのは20万円分です。差額の13万円ほどが手元に入ってくるわけではありません。「上限との差額が浮く」という考え方はできない仕組みです。
逆に言えば、授業料が上限より高い学校では、超えた分は自己負担になります。学校を検討するときは、「授業料が支給上限の内側に収まるか」という見方をすると、負担額を早く把握できます。
申請は「e-Shien」から。ひとり親への加算はない
申請はe-Shien(イーシエン)というオンラインのシステムで行います。学校からログインID通知書が配られるので、それを使ってご家庭で手続きします。
- 新入生:入学時に「認定申請」
- 在校生:毎年4月に「継続の確認申請」
在校生の確認申請は毎年必要です。1年目に申請したから自動で続く、というものではないので、4月に学校から案内が来たら必ず対応してください。
そしてもう一つ、正確にお伝えしておきたいことがあります。この制度に「ひとり親だから増額される」という加算はありません。令和8年度から所得要件そのものが撤廃されたため、世帯の形による差はつかない設計です。
ひとり親世帯への手厚さは、この制度ではなく、次に見る奨学給付金や貸付制度の側にあります。だから1階だけを見て「うちには特に何もない」と思わないでください。主役は2階です。
出典:文部科学省「高校生等への修学支援」(2026年8月確認)
【最重要】②奨学給付金は「通信制の額」で計算する
ここがこの記事のいちばん大事な章です。高校生等奨学給付金は、授業料以外の費用にあてるための、返還不要の給付金です。
令和8年度は、住民税所得割額が一定額未満の世帯まで対象に含まれています。「住民税非課税でないと無理」と思っていた方も、一度確認する価値があります。
令和8年度の支給額(年額)
まず通信制の額です。世帯の区分と、国公立か私立かで変わります。
| 世帯の区分 | 通信制・国公立 | 通信制・私立 |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | 32,300円 | 52,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 50,500円 | 52,100円 |
| 所得割額100円〜105,500円未満 | 16,830円 | 17,370円 |
| 所得割額105,500円〜182,500円未満 | 12,630円 | 13,030円 |
【最重要の注意】通信制は全日制の約3分の1
ネットで奨学給付金を調べると、まず出てくるのは全日制の金額です。ここに落とし穴があります。
住民税非課税世帯・私立の場合、全日制は年152,000円。同じ条件でも通信制は年52,100円です。およそ3分の1になります。
15万円もらえるつもりで計画を立てて、実際は5万円だった。この差は、ひとり親のご家庭にとって決して小さくありません。資金計画が3倍ずれることになります。
通信制はスクーリングの日数が少なく、通学にかかる費用や学用品の想定が全日制と違うため、額の設計自体が別になっています。制度の考え方としては筋が通っているのですが、調べる側からすると見落としやすい部分です。
もう一つ、覚えておくと役に立つ事実があります。生活保護世帯だけは、全日制と通信制で額が同じです(国公立32,300円/私立52,600円)。生活保護を受けているご家庭では、この点で全日制と通信制の有利不利は生じません。
何に使えるお金なのか(通信費が入っているのが大きい)
奨学給付金の使いみちとして挙げられているのは、次のような費用です。
- 教科書費・教材費
- 学用品費・通学用品費
- 入学学用品費
- 教科外活動費
- 通信費
通信制高校を検討しているご家庭にとって、通信費が対象に入っていることは見逃せません。オンラインで学ぶ以上、通信環境は必需品です。「ネット代までは制度の外だろう」と思い込まなくて大丈夫です。
【見落とし注意】就学支援金とは別々に申請が必要
ここが本当によく取りこぼされるところです。就学支援金と奨学給付金は別の制度で、申請も別々に必要です。
就学支援金はe-Shienから。奨学給付金は都道府県または在学している学校への申請になります。e-Shienで手続きを終えたから両方申し込んだことになる、ということはありません。
申請時期についても、知っておくと助かる仕組みがあります。新入生は4〜6月に一部の早期支給を申請できます。入学直後は教科書や学用品でお金が出ていく時期なので、この早期支給は実務的にありがたい制度です。
また、失業や収入減など家計が急変した場合の支援もあります。7月1日までの申請なら年額での給付、7月2日以降の申請は月割りでの給付という扱いです。年度の途中で状況が変わったときは、時期を待たずに相談してください。
なお、細かい支給要件や必要書類は都道府県ごとに運用が異なります。金額の区分についても、必ずお住まいの都道府県の案内で最終確認をしてください。学校の事務室に「奨学給付金の申請書はいつ配られますか」と聞くのが、いちばん確実で早い方法です。
出典:文部科学省「高校生等奨学給付金」(2026年8月確認)
【2026年度から拡充】対象世帯が年収490万円まで広がりました
ひとり親のご家庭に限らず、ここは全員に関わる変更なので書いておきます。高校生等奨学給付金は、令和8年度(2026年度)から対象世帯が拡充されました。
これまでは生活保護世帯と住民税非課税世帯が中心でしたが、年収380万円未満の世帯、さらに年収490万円未満の世帯まで対象に含まれるようになりました。
| 世帯の目安 | 通信制・国公立 | 通信制・私立 |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | 32,300円 | 52,600円 |
| 住民税非課税(年収270万円未満) | 50,500円 | 52,100円 |
| 年収270〜380万円(拡充分) | 16,830円 | 17,370円 |
| 年収380〜490万円(拡充分) | 12,630円 | 13,030円 |
出典:文部科学省「高校生等奨学給付金」令和8年度リーフレット(2026年6月発行・2026年9月にPDFを取得して確認)。年収は両親のうち一方が働き、高校生1人・中学生1人の4人世帯の目安です。
「うちは非課税じゃないから対象外」と思っていた方は、もう一度確認してください。年収490万円未満まで広がっています。ただし都道府県によって実施状況が異なるので、お住まいの自治体の案内で確かめてください。
【見落としやすい】奨学給付金は、就学支援金とは別に申し込みが必要です。公式のリーフレットにも「授業料支援の高等学校等就学支援金とは別々に申し込みが必要です」と明記されています。授業料の手続きをしたから安心、とはなりません。新入生は4〜6月に一部早期支給の申請ができる場合もあります。
③まとまったお金が要るときの無利子貸付
制度が整っていても、入学の時期にはどうしても現金が要ります。制服や教材、パソコン、入学金。給付金の入金より支払いのほうが先に来る、という現実的な問題です。
そこで3階部分、母子父子寡婦福祉資金貸付金です。ひとり親家庭のために国と自治体が用意している無利子の貸付制度で、高校進学に使えるものが2種類あります。
修学資金と就学支度資金
- 修学資金:授業料・書籍代・交通費など、在学中に継続してかかる費用
- 就学支度資金:入学時に直接必要になる被服等の費用
就学支度資金の限度額は明示されていて、国公立高校等が160,000円、私立高校等が420,000円です。入学時の出費に的を絞った制度なので、通信制高校の入学準備にも考え方としては当てはまります。
【重要】貸付額は自治体で大きく違う
修学資金のほうは、注意が必要です。国の資料には例示として「私立・自宅外で月52,500円」といった額が載っていますが、実際に借りられる額は自治体によって大きく異なります。
たとえば横浜市の場合、高校の修学資金は公立で月18,000円、私立で月30,000円という設定です。国の例示額とはかなり開きがあります。
ですから、ネット記事で見た「月52,500円まで借りられる」という数字を前提に計画を立てると、窓口で想定外の答えを聞くことになりかねません。金額は必ずお住まいの自治体で確認してください。
無利子で、連帯保証人も不要
借りることに抵抗を感じる方は多いと思います。私も、教育費で借金という言葉が出ると身構えます。ただ、この制度の条件はかなり穏やかです。
- 無利子(利息が上乗せされない)
- 親が借りる場合、お子さんを連帯借受人とすれば連帯保証人は不要
- 返済の開始は卒業後6ヶ月の据置のあと
- 償還期間は20年以内
卒業して半年たってから、20年かけて、利息なしで返す。教育ローンとは性質がかなり違います。「借りる」と身構えるより、支払い時期をずらすための道具と捉えたほうが実態に近いかもしれません。
窓口は、お住まいの自治体の福祉事務所またはひとり親支援の担当課です。審査や書類の準備に時間がかかることもあるので、入学の直前ではなく、進路が固まりかけた段階で一度相談しておくと安心です。
出典:こども家庭庁「ひとり親家庭等への支援」(2026年8月確認)
④生活保護世帯の場合|通信制も対象と明記されている
この章は、生活保護を受けているご家庭に向けて書きます。
「生活保護だと高校に行かせられないのでは」「通信制は認められないのでは」。そう心配して調べている方に、まずお伝えしたい事実があります。
生活保護の生業扶助には「高等学校等就学費」があり、厚生労働省の局長通知には「高等学校(定時制及び通信制を含む。)」と明記されています。通信制は制度の外側ではなく、はっきり内側にあります。
高等学校等就学費で見てもらえるもの
- 基本額:月額7,300円
- 教材代:実費
- 授業料:都道府県立高校の額以内(ただし就学支援金が支給される場合は対象外)
- 入学料
- 入学考査料:30,000円以内
- 通学のための交通費:必要最小限度の額
- 学習支援費(クラブ活動費等):年間上限101,000円
授業料の項目に「就学支援金が出る場合は対象外」とあるのは、二重に支給しないための整理です。授業料そのものが出ないという意味ではなく、就学支援金の側で先にまかなわれるという仕組みだと理解してください。
ICTを使った学習の通信費も対象になる
通信制高校を考えるうえで大きいのが、ここです。ICTを活用した教育にかかる通信費も、教材の利用に必要な額として対象とされています。
オンラインで授業を受け、レポートを提出する学び方が前提の通信制高校で、通信費が見てもらえるかどうかは死活問題です。制度の側もそこを想定した書き方になっています。
また、学級費・生徒会費・PTA会費などについても、月額2,170円の範囲で特別基準を設定できるとされています。細かい実費が積み上がる部分に、対応の余地が用意されているということです。
高校生のアルバイト代がすべて収入認定されるわけではない
「働いたら保護費が減るから、バイトはさせられない」と考えている方に、知っておいてほしい取り扱いがあります。
高校生のアルバイト収入のうち、就学費でまかないきれない経費にあてる必要最小限度の額は、収入として認定されません。対象として挙げられているのは、私立高校の授業料の不足分、修学旅行費、クラブ活動費、学習塾費などです。
お子さんが自分の学費のために働いたお金が、そのまま丸ごと差し引かれてしまうわけではない、ということです。具体的にどこまでが対象になるかは個別の判断になるので、働き始める前にケースワーカーに相談するのがいちばん確実です。
最後に一つだけ。生活保護を受けながら高校に通うことは、制度が正面から想定していることです。窓口で説明を求めることも、就学費の申請をすることも、当然の手続きです。恥じるようなことは何もありません。ためらって申請しないほうが、お子さんの選択肢を狭めてしまいます。
出典:厚生労働省「生活保護制度」(2026年8月確認)
児童扶養手当は高校生年代でも続く
ここまでは学費の制度でした。土台になる生活費の話も確認しておきます。
児童扶養手当の対象は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までです。つまり高校生年代も対象に入ります。中学卒業で終わる手当ではありません。
ここで大事なのは、この年齢要件が「全日制か通信制か」「在学しているかどうか」で決まるものではないという点です。年齢で区切られています。
令和8年4月からの支給額
- 全部支給:月額48,050円
- 一部支給:所得に応じて月額が段階的に決まります(金額は市区町村の通知でご確認ください)
- 児童2人目以降の加算:全部支給で月額11,350円
支給は年6回(1月・3月・5月・7月・9月・11月)にまとめて振り込まれます。毎月入るわけではないので、入学準備の時期と振込月の関係は把握しておくと計画が立てやすくなります。
なお、この金額はこども家庭庁の資料に「見込額」の注記がついています。確定額は必ずお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
進路変更で手当が止まるのか
「全日制から通信制に移ったら手当が止まるのでは」という不安をよく見かけます。
確認した範囲では、進路変更そのものを理由に手当が止まるという規定は見つかりませんでした。対象は年齢で決まる建て付けになっているからです。
ただし、この記事では「絶対に変わらない」とは書きません。世帯の状況(同居家族の変化、所得の変動など)によって支給額が変わる要素は別にありますし、運用は自治体の窓口が担っています。転入や編入を決める前に、市区町村の窓口に一度確認しておくことをおすすめします。
出典:こども家庭庁「ひとり親家庭等への支援」(2026年8月確認)
高校生には「もらえる奨学金」がほとんどない
奨学金という言葉から、日本学生支援機構(JASSO)を思い浮かべた方も多いと思います。ここは正確に押さえておきたい部分です。
JASSOの給付型奨学金は、大学・短大・高等専門学校・専門学校が対象です。高校在学中にもらえる給付型奨学金ではありません。
混乱のもとになりやすいのが、高校3年生のときに行う「予約採用」です。これは進学したあとに奨学金を受け取る約束をしておく手続きであって、高校在学中にお金が振り込まれる制度ではありません。名前に「高校生のうちに申し込む」という要素があるので、在学中の支援と誤解されやすいのです。
つまり高校の3年間については、返さなくていいお金の柱は、就学支援金と奨学給付金の2つだと考えるのが実態に近いということです。
この事実は、少し厳しく響くかもしれません。ですが裏を返せば、はっきりした結論になります。数が限られているからこそ、使える給付金と貸付を1つも取りこぼさないことが決定的に効いてくるということです。
奨学給付金の申請書を出し忘れる。福祉資金の窓口に行かないまま入学を迎える。こうした取りこぼしは、探せば見つかる別の制度で埋め合わせが利きません。だからこの記事では、申請の窓口と時期をくどいほど書いています。
出典:日本学生支援機構「奨学金」(2026年8月確認)
自治体でここまで違う|東京都と大阪府の例
ここまでは国の制度でした。これに各自治体の独自制度が乗ります。そして、この上乗せ部分は自治体によって設計思想がまったく違います。
2つの例を並べると、その違いがよく分かります。
東京都は「上乗せ型」
東京都には「私立高等学校等授業料軽減助成金」があります。都内在住であれば所得制限はありません。
令和8年度は、全日制・定時制等について年43,800円を国の457,200円に上乗せする形になっています。国の支給に都の助成を積む、という考え方です。
ただし通信制の令和8年度の上限額と申請時期は、2026年8月の時点で公式に公表されていません。この記事で金額を推測して書くことはしません。都の案内で最新情報をご確認ください。
また東京都には、別枠で「私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金」という制度もあります。一定の上限額の範囲内で実際の負担額まで助成する仕組みですが、こちらも令和8年度の上限額・申請時期は2026年8月時点で公表されていません。金額は都の案内でご確認ください。
大阪府は「キャップ+学校負担型」
大阪府は考え方がまったく違います。令和8年度から所得制限はなく、全日制については年63万円を超える授業料を学校側が負担するという仕組みになっています。上限を決めて、超過分を学校に持たせる設計です。
通信制については、1単位あたり12,030円が上限です。支給期間は全日制36月・通信制48月。要件として、府内在住であることに加えて「就学支援推進校」に在学していることが必要になります。
お気づきでしょうか。東京都は国の額に上乗せする型、大阪府は上限を設けて学校に負担させる型。そもそも制度の作りが違うので、「他県の人が書いたブログ」を読んでも自分の負担額は分かりません。
実用的なアドバイスを1つ。「お住まいの自治体名+私立高校 授業料 軽減」で検索してください。これで公式の案内ページにたどり着けます。通信制の扱いが別ページになっていることも多いので、ページ内で「通信制」の記載を探すところまでやると確実です。
あわせて、学校が自治体の要件(大阪府なら「就学支援推進校」)に該当するかどうかも、学校側に直接確認しておきましょう。要件を外れると自治体の上乗せは受けられません。
それでも対象外になる費用がある
ここまで制度を積み上げてきました。最後に、正直な話をします。
制度でまかなえない費用は確かにあります。この記事で「実質無料」と書かないのは、そう書いてしまうと入学後に必ず誤算が出るからです。
就学支援金の外側にあるもの
- 施設費・設備費(授業料とは別項目で請求される学校があります)
- 教材費(奨学給付金でカバーする範囲を超える場合があります)
- スクーリングの交通費・宿泊費(集中スクーリングが遠方の場合、まとまった額になります)
- サポート校の費用(就学支援金の対象外です)
- パソコン・タブレットの購入費(学び方によっては必需品ですが、支援金の対象ではありません)
とくに注意していただきたいのが、サポート校の費用です。就学支援金が使えるのは、高卒資格を出す通信制高校の授業料に対してだけ。サポート校のサポート費は制度の外にあります。「支援金があるから両方まかなえる」と考えると、想定が大きく崩れます。
この仕組みの違いは、サポート校と通信制高校の違いを解説した記事で詳しく整理しています。費用の見積もりを取る前に読んでおくと、質問すべきことが分かります。
スクーリングの費用も見落としやすい部分です。年に数日でも、遠方なら交通費と宿泊費が発生します。学校を選ぶ段階で「スクーリングはどこで、何日間ありますか」と聞いておくと、あとから慌てずに済みます。
通信制高校の学費が全体としてどういう構成になっているかは、通信制高校の学費をまとめた記事で整理しています。制度で引いたあとに残る自己負担の見当をつけるのに使ってください。
数字を並べると気が重くなるかもしれません。ですが、見えていない出費より、見えている出費のほうがずっと扱いやすいものです。全部見えていれば、対策の順番を決められます。
当サイトが基準に置くN高等学校
制度を理解したら、次は実際の学校で計算してみる段階です。当サイトは比較の基準としてN高等学校を置いています。理由は3つあります。
- 募集要項に学費の内訳が金額まで書かれている。金額が分かれば、制度を引いたあとの負担額を自分で計算できます(公式サイトには金額が載っていないため、資料を取り寄せる必要があります)
- 就学支援金の対象校である。この記事で見た1階部分がそのまま効きます
- 支給見込額の先引き制度がある。支給を待たずに、あらかじめ差し引いた金額で納入できる仕組みです
3つ目の先引きは、資金繰りの面で意味の大きい仕組みです。ただし正直に添えておくと、転入生・編入生は先引きの対象外です。年度の途中で移ることを考えている場合は、いったん納めて後から精算する流れになります。ここは事前に確認してください。
そして、この記事では「学費ゼロ」とは書きません。実際にいくら払うことになるかは、世帯の所得区分・自治体の上乗せ・履修する単位数によって変わります。同じ学校でも、ご家庭ごとに答えが違うのです。
だからこそ、確実なのは資料と個別相談で確認することです。募集要項に金額が書かれていれば、この記事の表と突き合わせて「就学支援金でここまで、奨学給付金で教材と通信費、残りがいくら」と、ご自宅の食卓で計算できます。
資料請求は無料ですし、入学の義務もありません。制度の話を頭に入れたこのタイミングで手元に置いておくと、数字が実感に変わります。
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お子さんのアルバイト代が家計の一部になっている場合は、扶養と社会保険も確認しておいてください。通信制課程の生徒は社会保険で「学生」扱いされないという、全日制にはない注意点があります。詳しくは通信制高校のバイトと扶養・社会保険の壁にまとめました。
相談先|一人で抱え込まなくていい
制度の話をいくつも並べてきました。全部を一人で調べて、申請して、期限を管理するのは、正直かなりの負担だと思います。仕事をしながらであればなおさらです。
ですので、頼れる窓口を整理しておきます。
- 学校の事務室:就学支援金・奨学給付金の申請書類と時期。在学中・入学予定の学校が最短の窓口です
- 都道府県の私学担当課/教育委員会:奨学給付金と自治体独自の授業料軽減
- 市区町村のひとり親支援担当課:児童扶養手当、母子父子寡婦福祉資金の相談
- 福祉事務所:生活保護に関すること、就学費の申請
窓口に行くとき、うまく話せるか不安になる方もいると思います。難しく考えなくて大丈夫です。「子どもの高校進学でお金のことを相談したい」と伝えれば、担当につないでもらえます。制度名を正確に言えなくても問題ありません。
進路そのものの相談先については、不登校・進路の相談窓口をまとめた記事で整理しています。お金の不安と進路の不安は絡み合っていることが多いので、両方の窓口を知っておくと動きやすくなります。
それから、これは自戒も込めてですが。制度の申請は、締切に間に合えばそれでいい話です。今日じゅうに全部やる必要はありません。1つずつで大丈夫です。
よくある質問
就学支援金と奨学給付金は、両方もらえますか?
はい、別々の制度なので併用できます。就学支援金は授業料に、奨学給付金は授業料以外の費用にあてるものです。
ただし申請は別々に必要です。就学支援金はe-Shienから、奨学給付金は都道府県または在学校へ。片方だけ申請して満足してしまうケースが多いので、学校の事務室に「両方の申請書はいつ配られますか」と確認しておきましょう。
通信制だと奨学給付金は減るのですか?
はい、通信制は全日制より低い額に設定されています。住民税非課税世帯・私立で比べると、全日制152,000円に対して通信制52,100円。およそ3分の1です(令和8年度)。
ネットで見つけた金額が全日制のものだと、資金計画が3倍ずれます。必ず「通信制の額」で計算してください。なお、生活保護世帯だけは全日制と通信制で同額です。
生活保護を受けていても、高校に行かせられますか?
行かせられます。生業扶助の「高等学校等就学費」があり、厚生労働省の通知には「高等学校(定時制及び通信制を含む。)」と明記されています。通信制も制度の対象です。
基本額は月額7,300円、ほかに教材代・入学料・入学考査料(30,000円以内)・通学交通費・学習支援費(年間上限101,000円)などがあります。ICTを活用した教育の通信費も対象とされています。まずは担当のケースワーカーに相談してください。
高校生がもらえる奨学金にはどんなものがありますか?
日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は大学・短大・高専・専門学校が対象で、高校在学中にもらえるものではありません。高校3年生の「予約採用」も、進学後に受け取る約束をする手続きです。
高校の3年間で返さなくていいお金は、実質的に就学支援金と奨学給付金が柱になります。そのぶん、この2つを取りこぼさないことが重要です。自治体や民間の高校生向け奨学金がある場合もあるので、都道府県の教育委員会にも確認してみてください。
【今夜できる一歩】制度の窓口に、1つだけ聞いてみる
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 使える制度は4つ。就学支援金(授業料)・奨学給付金(授業料以外)・福祉資金貸付(入学時)・生活保護世帯の就学費。加えて児童扶養手当は高校生年代でも続く
- 就学支援金は令和8年度から所得制限が撤廃。私立通信制は年337,200円が上限(授業料までしか出ない)。ひとり親加算はない
- 奨学給付金は通信制の額で計算する。全日制の約3分の1。就学支援金とは別に申請が必要
- まとまったお金には無利子・連帯保証人不要の福祉資金貸付。金額は自治体で大きく違う
- 生活保護世帯の就学費は通信制も対象と明記されている。通信費も見てもらえる
- 自治体の上乗せは設計思想がまったく違う。「自治体名+私立高校 授業料 軽減」で検索を
- それでも施設費・スクーリング交通費・サポート校費用・端末代は対象外。だから「実質無料」とは言えない
この記事の【今夜できる一歩】は、資料請求ではありません。順番として、こちらを先に置きます。
- 学校(在学中または志望校)に、奨学給付金の申請方法と時期を聞く
- 市区町村のひとり親支援窓口に、福祉資金と児童扶養手当のことを相談する
この2つが動き出せば、ご家庭が最終的に負担する額の輪郭が見えてきます。学校選びの話は、そのあとでも遅くありません。
お金を理由に選択肢を狭めなくていい、と私は思っています。制度を全部つなげたときに残る金額は、最初に学費表を見たときの数字とはかなり違うはずです。少なくとも、調べる前より判断はしやすくなります。
そのうえで、学校ごとの実際の金額を突き合わせたくなったら、学費を公式に明示しているN高等学校の資料が1部あると計算の土台になります。無料で、入学の義務はありません。急ぐ必要もありませんので、気持ちの余裕があるときにどうぞ。
