「通信制高校が向いている子って、どんな子ですか」というご質問をよくいただきます。
ただ、本当に知りたいのは逆のほうではないでしょうか。うちの子は通信制でやっていけるのか。入ってから「やっぱり無理だった」とならないか。
実際、この記事を書くにあたって調べたところ、「向いている人」より「向いてない人」で検索している親御さんのほうが6倍以上いました。心配が先に来るのは、当たり前だと思います。
この記事では、先に向いてないケースをはっきり書きます。そのうえで、不登校に限らず6つの観点から「向いている人」を整理しました。
※本文中の数字は、文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査(速報版)」および文部科学省「通信制高等学校情報発信サイト」(令和8年4月1日時点)で確認したものです。取得は2026年9月です。
うちの子は不登校ではないんです。それでも通信制って選んでいいものなんでしょうか。
もちろんです。いま通信制を選ぶ子の理由は、不登校だけではありません。スポーツ、仕事、留学、大学受験に集中したい。そういう理由で選ぶ子が確実に増えています。
- 向いてないのは、本人が納得していない子です。これだけは学校を変えても直りません
- 自己管理が苦手・朝が弱い・友達が心配。この3つは、伴走してくれる学校を選べば消えます
- 向いているのは不登校の子だけではありません。競技・仕事・留学・お金・留年でも選ばれています
- 迷ったら「本人が行きたいと言っているか」だけ見てください
\ 向いているか決めるのは、1校の中身を見てからでも遅くありません /
先に結論|通信制高校に向いていない人は、たった1種類です
通信制高校でつまずく子は、ほぼ全員「自分で決めていない子」です。つまずき方は、次の3つの形で出ます。
| 重なる条件 | 中身 |
|---|---|
| ① 課題が止まる | 声をかける人が誰もいない |
| ② 生活が昼夜逆転する | 起きる理由が家の中にない |
| ③ 本人が納得していない | 親が決めた進路になっている |
①と②は、学校を選び直せば消えます。残るのは③だけです。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
「うちの子は自己管理ができないから無理」と決めないでください。自己管理は、学校の仕組みで代わりができます。本人の気持ちだけは、代わりができません。
通信制高校に向いていない人の特徴7つ|正直に書きます
順番に見ていきます。’当てはまる=諦める、ではない’ので、当てはまった項目の対策もセットで書きました。
- ① 言われないと課題に手をつけられない
- ② 生活リズムを自分では戻せない
- ③ 毎日の友達・部活・行事を強く望んでいる
- ④「楽そうだから」だけで選ぼうとしている
- ⑤ 親が決めて、本人が納得していない
- ⑥ ひとりでいると気持ちが沈む
- ⑦ 費用の総額を確かめていない
7つも当てはまったらどうしよう、と思ってしまいます。
大丈夫です。全部当てはまる子はまずいません。それに、7つのうち5つは学校を選び直すだけで消えます。
①「言われないと課題に手をつけられない」タイプ
通信制の中心はレポートです。公立なら年80通前後を自分のペースで進めます。時間割もチャイムもありません。
ここで効いてくるのが、3年で卒業できた人の割合は公立33.4%・私立51.3%という数字です。
自由であることは、誰も背中を押してくれないということでもあります。誰も「今日やった?」と聞かない環境で、1年間レポートを出し続けられるか。ここが最初の関門です。
【対策】週1回でも面談がある学校、レポートの提出状況を保護者に共有してくれる学校を選べば、この項目は消えます。詳しくは通信制高校の選び方7ステップにまとめました。
② 生活リズムを自分では戻せない
毎朝の登校がなくなると、起きる理由が消えます。昼夜逆転は、通信制でいちばん多い失速のパターンです。
公立では在校生の25.6%が、4年以上かけて在籍しています(私立は1.9パーセント)。時間をかけて卒業できるのは通信制の良さですが、15歳の本人が「3年で卒業したい」と思っているなら、正直に受け止めたい数字です。
【対策】週2〜3日の通学コースから始める方法があります。ネット中心と通学型は、入学後に変更できる学校が多いです。
③ 毎日会う友達・部活・行事を本人が強く望んでいる
これは対策が効きにくい項目です。教室に毎日誰かがいることが本人の希望なら、通信制はその願いを満たしません。
友達は欲しいけど、学校には行きたくない、と言っています……。
その場合は「毎日でなくていい」かどうかを聞いてみてください。通学コースのある通信制なら、週2日から人に会える設計にできます。
④「楽そうだから」だけで選ぼうとしている
通信制は楽ではありません。全日制なら授業で教わる内容を、自分で読んで書いて提出する仕組みです。
「勉強しなくていい学校」ではありません。ここを誤解したまま入ると、最初のレポートで止まります。
ただし「楽になりたい」の中身が体調・人間関係・満員電車から離れたいなら、それは正当な理由です。逃げではありません。
⑤ 親が決めて、本人が納得していない
これがいちばん大きな失速要因です。理由は単純で、レポートを書くのは本人だからです。
親が「通信制にしなさい」と決めた場合、うまくいかなかったときに「お母さんが決めたから」となります。主語が本人にならない進路は、続きません。
決め方のコツは、親が選択肢を集めて、選ぶのは本人にすること。学校見学や資料請求は、この材料をそろえる作業です。
⑥ ひとりでいると気持ちが沈んでしまう
家にいる時間が長くなるのが通信制です。人と離れると落ち込みが強くなるお子さんには、ネット中心のコースは向きません。
【対策】スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置は学校差が大きいところです。SSWの配置は公立が約9割、私立は約2割というデータがあります。相談体制を重視するなら公立も候補に入ります。
⑦ 費用の総額を確かめないまま決めようとしている
これは親御さん側の落とし穴です。サポート校を併用すると、学費が二重になります。
| 組み合わせ | 費用の出方 |
|---|---|
| 通信制高校のみ | 学費は1本 |
| 通信制+サポート校 | 高校の学費+サポート校の学費で二重 |
仕組みは通信制高校とサポート校の違いで解説しました。総額を出してから決めれば、この項目は消えます。
- 本人が「レポート」という言葉の意味を知っているか
- 1週間にどのくらい書くのか、具体的に聞いたか
- 「勉強しなくていい」と思っていないか
入学前に一度、学習の中身を親子で確認しておくと、この項目はほぼ防げます。
\ 「うちの子には無理かも」は、サポート体制を見てから判断してください /
向いていない7つのうち、5つは学校を選び直せば消えます
| 特徴 | 学校選びで消せるか |
|---|---|
| ① 課題が止まる | 消せる|伴走型の学校を選ぶ |
| ② 昼夜逆転 | 消せる|通学コースから始める |
| ③ 毎日の友達がほしい | 消しにくい|週数日の通学で部分的に |
| ④ 楽そうだから | 入学前の説明で消せる |
| ⑤ 本人が納得していない | 消せない|ここだけは先に解く |
| ⑥ ひとりだと沈む | 消せる|相談体制で選ぶ |
| ⑦ 総額が不明 | 資料請求で消せる |
消えないのは⑤だけです。あとの6つは、学校を選び直すか、入学前に確かめれば解決します。
だから、いちばん先にやることは学校探しではありません。本人と話すことです。
通信制高校が向いている人|不登校の子だけではありません
ここからが本題です。’不登校以外の理由も全部’挙げていきます。
- 観点1|体と心の状態(不登校・起立性・感覚過敏・持病)
- 観点2|時間を別のことに使いたい(競技・芸能・IT・留学・仕事)
- 観点3|学習のペース(学び直し/先取り/受験に集中)
- 観点4|お金(公立の安さ・支援金・給付金)
- 観点5|環境(転居・通学圏・人間関係・介護)
- 観点6|いまの在籍状況(留年・中退・受験の失敗)
観点1|体と心の状態から
| こんなお子さん | 通信制が効く理由 |
|---|---|
| 不登校・登校しぶり | 毎朝決まった時間に教室へ、という一番高いハードルが外れる |
| 起立性調節障害 | 午前がつらくても、学習時間を午後や夜に寄せられる |
| 感覚過敏 | 教室のざわつき・におい・チャイムを避けられる |
| 対人不安・場面緘黙 | 人と話さずに単位が取れる設計の学校がある |
| 持病・通院が多い | 治療のスケジュールを最優先にできる |
数字でも裏づけがあります。私立通信制の新入学生のうち44.5%が不登校経験者です。再スタートの場として、実際に機能しています。
観点2|時間を別のことに使いたい子
こちらは学力や心の状態と関係なく選んでいる層です。全日制だと、平日の6時間が丸ごと埋まってしまうからです。
- スポーツ・競技(練習と遠征が平日に入る)
- 芸能・音楽・ダンス(オーディションや稽古)
- eスポーツ・ゲーム制作
- プログラミングやデザインで、高校生のうちに実務経験を積む
- 海外留学・海外在住(日本の高校卒業資格を保ったまま)
- 家業や農業を手伝う
- 働きながら学ぶ・早く自立したい
この2番目の層、意外に思われるかもしれませんが相談の3割くらいを占めます。「学校が嫌い」ではなく「時間が足りない」という相談です。
この層の子は、通信制を前向きに選んでいます。「学校に行けなかった子」ではありません。
観点3|学習のペースから
- 中学範囲からやり直したい(学び直し)
- 逆に先取りしたい・授業が退屈
- 得意と不得意の差が大きい(苦手科目で留年しない)
- 大学受験に全部の時間を使いたい
大学進学を考えているなら、進路実績を公表している学校を選んでください。通信制全体の大学等進学率は28.6%、全日制等は58.4%で、学校差が非常に大きい部分です。
観点4|お金の事情から
| 状況 | 使えるもの |
|---|---|
| 学費を抑えたい | 公立なら年2〜4万円程度 |
| 住民税非課税世帯 | 高校生等奨学給付金が年50,500円/52,100円 |
| 所得が高めの家庭 | 2026年度から就学支援金の所得制限が撤廃 |
| きょうだいが多い | 進学費用を大学に残せる |
- 就学支援金|授業料に充てる。2026年度から所得制限なし
- 奨学給付金|教科書代などに充てる。非課税世帯が対象
- 自治体独自の上乗せ|お住まいの都道府県で確認
この3つは併用できます。私立でも実質負担が下がるので、「私立は高いから無理」と決める前に一度確認してみてください。
※奨学給付金の額は令和8年度・通信制の年額です。第1子と第2子以降で額が変わります。出典:文部科学省「高校生等奨学給付金」。
公立と私立のどちらが合うかは公立の通信制高校とはで整理しました。
観点5|まわりの環境から
- 転勤・転居が多い(オンライン中心なら引っ越しても続く)
- 通学圏に通える高校がない(離島・過疎地)
- いじめや部活のトラブルで、いまの人間関係を物理的に切りたい
- 家族の介護やきょうだいの世話がある
観点6|いまの在籍状況から
| いまの状況 | 通信制でできること |
|---|---|
| 留年が決まりそう | 転入なら学年を落とさずに済む場合があります |
| すでに中退した | 編入で高卒資格を目指せる |
| 「高校が合わない」と言っている | 辞める前の選択肢として |
| 受験に失敗した・内申が足りない | 学力試験のない学校が多い |
留年が見えているなら、動くのは年度末より前が有利です。詳しくは通信制高校の転入手続きをご覧ください。
不登校でもない、やりたいこともない。そんな子は通信制に向いていない?
不登校でも、やりたいことがあるわけでもない普通の子です。通信制って浮きませんか。
浮きません。いま通信制に通う生徒は全国で30万人を超えています。もう「特別な進路」ではないんです。
通信制を選ぶ理由に、正解はありません。ただ、これだけはお伝えします。
理由が本当に何もない場合だけは、いったん立ち止まってください。「なんとなく楽そう」で入ると、①と②のパターンに入りやすくなります。理由は小さくてかまいません。「朝がつらい」「人が多い場所が苦手」でも立派な理由です。
- 「通信制=不登校の子の学校」→ いまは理由が多様です
- 「通信制=楽」→ 自分で読んで書く分、負荷は軽くありません
- 「通信制=高卒資格が違う」→ 全日制とまったく同じ卒業資格です
卒業資格が同じだと知って、少し気が楽になりました。
向いているかどうかは、この2つだけで決まります
- ① 本人が「行きたい」と言っているか
- ② 課題を進める仕組みを、学校か家庭のどちらかが持てるか
②がなくても、①があれば何とかなります。①がなければ、②がどれだけそろっても続きません。
②は「親が毎日見る」という意味ではありません。学校側が持つなら伴走型の私立、家庭で持つなら公立でも回ります。
ここまで読んで①が心配なら、資料を1校分だけ取り寄せて、本人に見せてみてください。親が説得するより、本人が学校の中身を見たほうが早いことがあります。
\ 親が説得するより、本人が中身を見たほうが早いです /
よくある質問
通信制高校に向いてない人の特徴を一言でいうと何ですか?
「本人が納得していないまま入ること」です。自己管理が苦手、朝が弱いといった特徴は、伴走してくれる学校や通学コースを選べば対策できます。対策できないのは、親が決めて本人が納得していないケースです。
自己管理ができない子は、通信制に入らないほうがいいですか?
そうとは限りません。レポートの提出状況を保護者に共有する学校、週1回の面談がある学校を選べば、仕組みのほうで補えます。逆に「自由なほうが伸びる」と思って放任型を選ぶと、3年で卒業できない可能性が上がります。
不登校ではないのですが、通信制を選んでもいいですか?
はい。スポーツ、芸能、プログラミング、留学、大学受験への集中、家業の手伝いなど、時間を別のことに使いたいという理由で選ぶお子さんは確実に増えています。「不登校の子のための学校」という理解は、いまの実態と合っていません。
通信制に向いている子の性格ってありますか?
性格では決まらない、というのが調べた結論です。同じ性格でも、伴走のある学校なら続き、放任型なら止まります。見るべきは性格ではなく「本人の意思」と「進める仕組みがあるか」の2つです。
通信制は3年で卒業できますか?
できますが、全員ではありません。令和6年度に卒業した人のうち、3年間の在籍で卒業したのは公立33.4%・私立51.3%でした(文部科学省の実態調査をもとに集計)。3年で卒業したいなら、その前提でサポート体制を確認してください。
メリットとデメリットも知りたいです。
制度の面からは通信制高校のメリット・デメリットで、7つの弱点と6つの強みを整理しています。この記事は「人物像」、そちらは「仕組み」の話です。
通信制にして後悔しないか不安です。
後悔につながりやすいのは、①本人が納得していない、②総額を確認していない、③サポート体制を見ずに決めた、の3つです。この3つを潰しておけば、大きく外すことはほとんどありません。
まとめ|通信制高校に向いていないのは、納得していない子だけ
- 通信制に向いていないのは、本人が納得していない子だけです
- 自己管理・朝の弱さ・友達の不安は、伴走してくれる学校を選べば消えます
- 不登校でなくても選んでいい|競技・仕事・留学・お金・留年、どれも立派な理由です
- 親がやることは説得ではなく、選択肢を集めて本人に渡すこと
今日やることは、本人に「どんな学校なら通えそう?」と聞くことだけです。答えが返ってこなくても構いません。聞いた、という事実が残ります。
決めるのは今日でなくて構いません。話すための材料を、机の上に1つ置くところからで十分です。
学校の絞り込み方は通信制高校の選び方7ステップ、公立と私立の違いは公立の通信制高校とはにまとめています。
