「高校をやめてしまったけれど、高卒認定を取れば高校を卒業したことになるのだろうか」。お子さんの中退や、中退を考えている様子を前にして、そんなふうに調べていませんか。
N高に入り直すのか、高卒認定を取るのか。どっちを選ぶかで、その後に開く進路の幅が変わります。この記事では両者を同じ項目で比較します。
私も子を持つ親として、文部科学省の資料と法令を一つずつ確認しました。先に、いちばん大事な結論をお伝えします。
高卒認定試験(高認)に合格しても、「高等学校を卒業した」ことにはなりません。得られるのは大学入学資格と「高校卒業者と同等以上の学力がある」という認定です。一方、通信制高校を卒業すれば、学歴はまぎれもなく「高等学校卒業」になります。
ただし、これは高認を否定する話ではありません。高認には高認にしかない良さがあり、実際に使うべき場面もあります。この記事では、法令と文科省の公表資料だけを根拠に、両者の違いと選び分けの基準を整理します。読み終わる頃には、「うちの子にはどちらが必要か」がはっきりしているはずです。
なお、「高校卒業」という学歴を取り直す道を検討するなら、中退者の編入学を受け入れている通信制高校の資料を1部手元に置いておくと、比較がぐっと具体的になります。生徒数最大級のN高等学校は資料請求が無料です。
結論|決定的な違いは「高卒になるかどうか」
高認と通信制高校は、よく並べて語られます。どちらも「高校をやめた後の進路」として紹介されるからです。でも、この2つはゴールの性質がまったく違います。
- 高卒認定に合格=「高校卒業者と同等以上の学力がある」と認められ、大学入学資格が得られる。渡されるのは合格証書
- 通信制高校を卒業=学歴が「高等学校卒業」になる。渡されるのは卒業証書。全日制の卒業と法令上の差はない
言い換えると、高認は「大学の入り口を開ける鍵」、高校卒業は「学歴そのもの」です。鍵は扉を開けてくれますが、履歴書の学歴欄を書き換えてはくれません。
身近なたとえで言えば、運転免許に近いかもしれません。免許があれば車には乗れます。でも「自動車学校を卒業した」という経歴が、そのまま別の資格になるわけではない。高認も同じで、「できること」は増えますが、「肩書き」は増えないのです。
ここを勘違いしたまま高認を選ぶと、大学受験まではうまくいっても、就職の場面で「あれ?」となることがあります。逆に、この違いを分かったうえで高認を選ぶのなら、それはとても合理的な判断になり得ます。
この記事は、その「分かったうえで選ぶ」ための材料をそろえる記事です。まずは、高認で得られるものを法令の条文で確認していきましょう。
【法令で確認】高認で得られるものは何か
ネット上には「高認=高卒と同じ」という説明も「高認は意味がない」という説明も転がっています。どちらも極端です。法令の条文を見れば、実際のところがはっきり分かります。
学校教育法第90条|法律は「卒業した者」と「同等以上の学力」を並列で書いている
大学に入学できる人の条件を定めているのが、学校教育法第90条第1項です。ここには、大学に入学できるのは「高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者」又は「これと同等以上の学力があると認められた者」と書かれています。
注目してほしいのは「又は」の一語です。法律は、卒業した者と、同等以上の学力を認められた者を、別のカテゴリとして並べています。同じものなら並べる必要はありません。別だからこそ、両方を書いて「どちらでも大学に入れますよ」と定めているわけです。
高認合格者は、この後者に入ります。学校教育法施行規則第150条第5号が、高認合格者を「同等以上の学力があると認められる者」として規定しているからです。
施行規則第150条|効力は「大学入学に関し」と限定されている
この第150条第5号には、もう一つ見逃せない言葉があります。条文の書き出しが「大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」となっている点です。
つまり、高認合格の「同等以上」という効力には、「大学入学に関し」という場面の限定がついています。あらゆる場面で高卒と同じに扱われる、という書き方ではないのです。この一文が、後で見る就職の話につながります。
文部科学省自身の説明も、この線に沿っています。高認について「合格すると『高等学校卒業者と同等以上の学力がある』と認められ、『大学入学資格』が得られます」と説明しています。「高校を卒業したことになります」とは書かれていません。
渡されるのは「卒業証書」ではなく「合格証書」
制度の性格がいちばん分かりやすく表れているのが、合格したときに渡される書類です。高等学校卒業程度認定試験規則第9条により、合格者に授与されるのは合格証書。卒業証書ではありません。
名前が違うだけ、と思われるかもしれませんが、書類の名前は制度の中身をそのまま表しています。卒業証書は「ある学校の課程を修了した」という記録で、合格証書は「ある試験に受かった」という記録です。前者は学歴になり、後者は資格になります。
ここで、正直に書いておきたいことがあります。ネット上でよく見る「高認を取っても最終学歴は中卒のまま」という表現について、私は文部科学省がそう明言した文書を確認できませんでした。だからこの記事では断定しません。確実に言えるのは、高校を卒業したことにはならないため、履歴書では学歴欄は中学卒業まで、資格欄に高認合格を書くのが一般的な書き方になる、というところまでです。
ここまでが、高認で得られるものの正確な姿です。大学の扉は確かに開きます。ただし、学歴という欄は空いたままです。
出典:学校教育法(e-Gov法令検索)/学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)/文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」(いずれも2026年8月確認)
一方、通信制高校を卒業すると
では、通信制高校を卒業した場合はどうなるのか。ここは断定できます。
通信制高校を卒業すれば、学歴は「高等学校卒業」です。全日制の卒業と法令上の差はありません。これも条文で確認できます。
卒業の条件も、卒業証書の扱いも、課程で区別されていない
学校教育法施行規則第96条第1項は、74単位以上を修得した生徒について校長が全課程の修了を認定する、と定めています。この条文は、全日制・定時制・通信制という課程の区別をしていません。どの課程でも、74単位以上という同じ物差しです。
そして、施行規則第104条第1項が準用する第58条には、全課程を修了したと認めた者には「卒業証書を授与しなければならない」と書かれています。「授与できる」ではなく「しなければならない」。通信制であっても、卒業した生徒には卒業証書が出るのです。
大学入学資格についても同じです。先ほど見た学校教育法第90条第1項の「高等学校を卒業した者」に、課程の限定はありません。通信制の卒業生も、全日制の卒業生とまったく同じ資格で大学に出願できます。
まとめると、通信制高校の卒業証書は「通信制版の卒業証書」ではありません。全日制と同じ「高等学校卒業」です。履歴書に書くときも「〇〇高等学校 卒業」であり、通信制と明記する義務はありません。
かかる年数|通信制は「3年以上」だが、実際はほぼ3年
気になるのは年数ですよね。学校教育法第56条では、高校の修業年限は全日制が3年、定時制と通信制は「3年以上」と定められています。「以上」という書き方を見ると、4年かかるのでは、と心配になるかもしれません。
実態は違います。令和7年度の通信制課程の設置校323校のうち、修業年限を3年としている学校は319校(98.8%)。ほとんどの通信制高校は3年で卒業できる設計です。
しかも、中退したお子さんの場合は、前の高校で取った単位と在籍期間を引き継げるのが普通です。1年生の途中で辞めた子が、ゼロから3年かけ直すとは限りません。この点は後の章でくわしく扱います。
出典:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)/文部科学省「学校基本調査」(2026年8月確認)
【表】高卒認定とN高(通信制高校)の違いを8項目で比べる
ここまでの内容を、判断に使える形に並べます。N高等学校を通信制高校の代表例として、8つの項目で比べました。
| 項目 | 高卒認定(高認) | N高(通信制高校)を卒業 |
|---|---|---|
| 学歴 | 高校卒業にはならない(学歴欄は中学卒業まで、資格欄に高認合格) | 高等学校卒業。全日制と法令上の差なし |
| 得られるもの | 合格証書。大学入学資格と「同等以上の学力」の認定 | 卒業証書。学歴そのもの |
| 必要な期間 | 最短で数カ月〜1年(試験は年2回、科目合格を積み上げ可) | 3年以上(実際は3年が98.8%・令和7年度)。中退者は前の高校の単位・在籍期間を引き継げる |
| 費用 | 受験料のみ。7科目以上8,500円/4〜6科目6,500円/3科目以下4,500円 | 学費がかかる。N高ネットコース普通科の3年間実質負担は先引きあり199,000円(2027年度) |
| 学ぶ内容 | 試験科目の合格が目的。学習は基本的に自力(塾・予備校は任意) | 教育課程に沿って授業・レポート・スクーリング。課外の学びも用意 |
| 同級生や先生との関わり | 基本的にない(試験を受けるだけ) | 担任・メンター、オンラインのクラス、部活動やイベントがある |
| 就職での扱い | 国家公務員の高卒者試験は受験可。民間は各社判断で、高卒枠に応募できない場合もある | 高卒として扱われる。高卒求人に応募できる |
| 大学受験資格 | あり(学校教育法第90条第1項の「同等以上の学力」) | あり(同項の「卒業した者」) |
表を眺めて気づいてほしいのは、大学受験資格の行だけは「あり」と「あり」で並んでいることです。大学に行くというゴールだけを見れば、両者に差はありません。差が出るのは、学歴・期間・費用・人との関わり・就職の5つです。
だから選び方はシンプルになります。お子さんのゴールが大学進学だけなのか、それとも「高卒」という学歴を残したいのか。ここが分かれ道です。次の章から、それぞれの中身をもう少し正確に見ていきます。
高認の中身を正確に|受験資格・科目数・費用・日程
高認を選択肢に入れるなら、制度の中身を正確に知っておく必要があります。ネットの情報は古いものも混ざっているので、ここは文科省の最新資料で確認した内容だけを書きます。
受験資格は「16歳以上」。在学中でも受けられる
高等学校卒業程度認定試験規則第3条により、受験できるのは受験する年度内に満16歳以上になる方です。中退していることは条件ではありません。
意外に知られていませんが、高校に在学中でも高認は受験できます。実際、令和7年度の出願者のうち、全日制に在学中の方が2,618人(13.7%)、定時制・通信制に在学中の方が3,645人(19.1%)いました。合わせて3割以上が、高校に籍を置いたまま受けているのです。
この事実は、親御さんの選択肢を広げてくれます。「高認を受ける=高校を辞める」ではありません。在籍したまま受けて、結果を見てから進路を決める、という順番も取れるということです。
合格に必要なのは9〜10科目。令和8年度から「情報」が加わる
ここは特に注意してほしいところです。合格に必要な科目数は、9〜10科目(理科の選び方によって変わります)。古い記事には8科目と書かれているものもありますが、現在の制度は違います。
令和8年度第1回試験から、「情報」が必修科目に追加されます。お子さんが今から準備するなら、この変更を前提に計画を立ててください。数年前の合格体験記や参考書を鵜呑みにすると、科目が足りない事態になりかねません。
ただし、10科目を一度に取る必要はありません。規則第6条により、科目合格を累積できます。今回は3科目、次回は4科目、というように何回かに分けて積み上げていけばよいのです。試験は年2回あるので、1年で2回チャレンジできます。
令和8年度の日程は、第1回が8月6日・7日、第2回が11月7日・8日です。どちらも2日間かけて実施されます。
高校で取った単位で科目免除ができる。ただし全科目免除はNG
中退したお子さんに関係が深いのが、科目免除の仕組みです。前の高校で修得した単位があれば、その科目の受験を免除してもらえます。手続きに必要な書類は、前の高校が発行する単位修得証明書です。
2年生の途中まで通っていたお子さんなら、かなりの科目が免除になる可能性があります。残り2〜3科目だけ受ければよい、というケースも珍しくありません。
ただし、落とし穴が1つあります。規則第5条第6項により、全科目が免除になった場合は、合格者になれません。最低1科目は実際に受験して合格する必要があります。「単位が足りているから受験しなくていい」とはならないので、ここは覚えておいてください。
受験料は最大でも8,500円
費用面は高認の大きな強みです。受験料は科目数によって決まります。
- 7科目以上:8,500円
- 4〜6科目:6,500円
- 3科目以下:4,500円
高校の学費と比べれば、桁が2つ違います。この安さは、経済的な事情で進学をあきらめかけているご家庭にとって、はっきりした利点です。
実際の合格状況|出願者の47.7%が高校中退者
令和7年度の実績を見ておきましょう。出願者19,050人、受験者16,820人、合格者7,937人です。
出願者を最終学歴別に見ると、高校中退が9,079人で47.7%と最多。約半数が、お子さんと同じ立場から受けています。合格者の平均年齢は20.5〜20.9歳。10代の受験者も多数いる試験です。
なお、「高認合格者の何%が大学に進学したか」という統計は、公的には確認できませんでした。文科省のパンフレットに進学に関する数字がありますが、あれは受験の目的を尋ねた結果であって、進路の実績ではありません。当サイトでは進学率として扱いません。ネットで「高認合格者の◯%が大学へ」という数字を見かけたら、出どころを確かめてください。
出典:文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」(2026年8月確認)
【意外と知られていない】高認の合格科目を高校の単位にできる
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい話かもしれません。高認と通信制高校は、実は「どちらか一方」ではないのです。
高認で合格した科目を、高校の単位として認定してもらえる制度があります。学校教育法施行規則第100条第1号に定められた仕組みです。
どういうことか。たとえば通信制高校に編入したお子さんが、在籍しながら高認を受けて数科目に合格する。その合格科目を、在籍校が卒業に必要な単位として認めてくれる場合がある、ということです。うまくいけば、卒業までの負担を減らせます。
ただし、大事な条件があります。文部科学省は「認定できるかどうかは学校長の判断」であり、「希望する場合は受験前に必ず高校等に確認してください」と注記しています。先に受けてから相談しても、認めてもらえない可能性があるということです。順番を間違えないでください。
この制度を知っていると、進路の考え方が変わります。「高認か、高校卒業か」という二者択一ではなく、「高校に在籍しながら高認も使い、高卒という学歴を取りに行く」という道が見えてくるからです。
先ほど見たとおり、高認出願者の3割以上は高校在学中の方でした。その中には、この使い方をしている人も含まれているはずです。
お子さんが通信制高校への編入を考えているなら、入学前の相談の場で「高認の合格科目の単位認定は行っていますか」と聞いてみてください。答えられる学校かどうかで、その学校の柔軟さも見えてきます。
就職ではどう扱われるか|正直に書きます
親御さんが本当に心配しているのは、ここではないでしょうか。高認を取ったあと、就職でどう扱われるのか。
結論を先に言うと、公務員では高卒者試験を受けられることが公的に確認できます。一方、民間企業は各社の判断です。「高認は就職でも高卒扱い」と一律には言えません。順に見ていきます。
国家公務員は受験案内に明記されている
ここははっきりしています。人事院の「2026年度 国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)」の受験案内には、受験資格として「高等学校卒業程度認定試験に合格した者であって、合格した日の翌日から起算して2年を経過していないもの」が明記されています。税務職員採用試験も同様です。
「2年」という期間の条件がついている点は、見落とさないでください。合格してから時間が経ちすぎると、この枠では受けられなくなります。公務員を視野に入れるなら、合格のタイミングと受験計画をセットで考える必要があります。
また、文科省のパンフレットには、高認合格で受験資格が得られる国家試験・採用試験の一覧が載っています。保育士、衛生管理者、作業環境測定士、職業訓練指導員、建築物環境衛生管理技術者、各種施工管理技術検定、裁判所職員一般職(高卒者区分)、皇宮護衛官、入国警備官、海上保安学校・気象大学校・防衛大学校などです。
公的な資格・採用の世界では、高認はきちんと機能します。「高認を取っても何も変わらない」というのは誤りです。保育士を目指したい、公務員を受けたいというお子さんにとって、高認は現実的な扉になります。
民間企業は各社判断。「同等扱い」は要請であって義務ではない
問題は民間企業です。ここは正直に書きます。
文部科学省は企業向けのパンフレットを作り、高認合格者の採用について理解を求めています。ただし、その表現は「『高卒者と同等』に扱われることを目指しています」というものです。
「目指しています」は要請の言葉であって、義務を課す言葉ではありません。文科省が企業にお願いしている段階だ、ということです。
ですから当サイトでは、「高認は就職でも高卒扱いです」とは書きません。実際には、企業によっては高卒枠に応募できないことがあります。求人票の応募資格が「高等学校卒業以上」となっていた場合、高認合格でよいかどうかは、その企業に確認しないと分からないのが実情です。
この差は、記事の最初に見た条文の話とつながっています。施行規則第150条第5号の効力は「大学入学に関し」と限定されていました。就職の場面まで法律が保証しているわけではないのです。
高校卒業のほうは、この不確実性がありません。高卒求人にそのまま応募できますし、応募資格を確認する手間もいりません。就職の場面での「確実さ」は、高校卒業という学歴の分かりやすい価値です。
出典:人事院「国家公務員試験採用情報NAVI」/文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」(2026年8月確認)
高認が向くのはどんな場合か
ここまで「高卒にはならない」という話を重ねてきましたが、繰り返します。高認は劣った選択肢ではありません。むしろ、次のような場合にはこちらのほうが合理的です。
高認が向くのは、目的が「大学進学」にはっきり定まっていて、時間を短縮したい場合です。
こんなお子さんには高認が合う
- 大学進学が目標で、受験勉強に集中したい。高校の授業やレポートより、志望校の対策に時間を使いたいタイプ
- 年齢的に、同学年に追いつきたい。中退で遅れた分を、最短で取り戻したい
- 学費の負担が難しい。受験料8,500円までで大学入学資格が得られるのは、高認だけの強み
- 学校という場に通うこと自体が負担。人と関わらずに資格だけ取りたい段階にいる
- 保育士など、高認で受験資格が得られる資格を目指している
- すでに20代で、大学に行き直したい。高校3年分の時間をかける必然性が薄い
とくに4つ目は大事です。学校に通うことがしんどい時期のお子さんに、「まず学校に行きなさい」と言っても前に進みません。そういう段階では、自宅で受けられる高認のほうが現実的です。
経済面の支援も用意されている
もう一つ、高認を選ぶ場合に知っておいてほしい支援があります。
大学等の高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+授業料減免)は、「高卒認定試験を経て進学する方も対象」とされています(令和2年4月から)。高認から大学に進む場合も、この制度の枠外ではありません。
また、こども家庭庁の補助事業として、ひとり親家庭向けの「高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」があります。お住まいの自治体が実施しているかどうか、窓口で確認する価値があります。
高認を選ぶときに、私が親御さんにお願いしたいのは1つだけです。「高卒にはならない」と分かったうえで選んでください。知って選ぶ高認と、勘違いしたまま選ぶ高認は、まったく別物です。前者なら、就職の場面で困ったときも「大学に進む」という次の手が用意できます。
出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」(2026年8月確認)
通信制高校が向くのはどんな場合か
では、通信制高校のほうが合うのはどんな場合か。
通信制高校が向くのは、進路がまだ固まっていない場合と、「高卒」という学歴を残しておきたい場合です。
こんなお子さんには通信制高校が合う
- 進路がまだ決まっていない。大学に行くか就職するか分からない段階なら、両方の道が残る「高卒」を取っておくほうが安全
- 就職も視野に入れている。高卒求人にそのまま応募できる確実さは、高認では得られない
- 一人で勉強を続ける自信がない。高認は自力での学習が前提。伴走してくれる先生がいる環境のほうが続く子は多い
- 同世代とのつながりを、細くても持っておきたい。オンラインのクラス、部活動、イベントがある
- 生活のリズムを立て直したい。定期的な提出物やスクーリングが、生活のペースメーカーになる
- 前の高校の単位を無駄にしたくない。編入なら単位と在籍期間を引き継げる場合が多い
1つ目が、私は特に重いと思っています。17歳や18歳の時点で「大学に行く」と決め切れている子のほうが、実は少数派です。迷っているなら、選択肢が多いほうを取る。高卒という学歴は、大学の道も就職の道も、どちらも開けたままにしてくれます。
3つ目も現実的な話です。高認は9〜10科目を自分で計画して勉強する試験です。学校のペースがしんどくて辞めた子が、一人で10科目分の勉強を管理できるとは限りません。ここは、お子さんの性格を親御さんが一番よく分かっているはずです。
判断の質問を1つ挙げるなら、これです。「お子さんは、3年後に何をしていたいか答えられますか」。答えが「大学」ではっきりしているなら高認も有力。答えが「まだ分からない」なら、通信制高校で高卒を取っておくほうが、後悔しにくい選び方です。
費用で比べる|安さだけで選ぶと、学歴が残らない
ここまで読んで、「それでも費用が気になる」と思われた方も多いはずです。実際、金額の差はかなり大きくなります。数字を並べておきます。
高卒認定試験にかかるのは、受験料だけ
高認の受験料は、出願する科目数で決まります。
- 7科目以上:8,500円
- 4〜6科目:6,500円
- 3科目以下:4,500円
入学金も授業料もありません。学校に籍を置くわけではないので、当然といえば当然です。ただし、これは受験料だけの話です。参考書や過去問、塾や通信講座を使うなら、その費用は別にかかります。独学でそろえるとしても、10科目近い教材を買えばそれなりの金額にはなります。
N高ネットコース普通科の3年間はいくらか
比較のために、N高等学校のネットコース普通科(2027年度)の数字を置きます。3年間の実質負担は、就学支援金の「先引き」があるかどうかで大きく変わります。
- 先引きあり:199,000円(3年間)
- 先引きなし:1,099,000円(3年間)
ここで、中退したお子さんの編入を考えている方に、必ず知っておいていただきたい注意点があります。編入学・転入学では、この就学支援金の「先引き」が使えません。初年度はいったん全額を納入し、支援金は後日還付される形になります。
ネットコース普通科の場合、先引きが使えれば初年度73,000円のところ、先引きなしだと373,000円を先に払うことになります。差額はあとから戻ってくるお金ですが、「戻ってくる」と「今払わなくていい」は家計にとって別の話です。ここを知らずに手続きに入ると、想定外の出費に見えてしまいます。
何にお金を払うのか、で考える
数字だけを見れば、高認の圧勝です。受験料8,500円と、3年間で20万円前後。桁が違います。
ただ、その差額で何を買っているのかを一度考えてみてください。高認に合格して手元に残るのは「大学入学資格」です。高校を卒業したという学歴は残りません。通信制高校を卒業して残るのは「高校卒業」という学歴そのもので、これは進学にも就職にも、履歴書の学歴欄にも使えます。
安いほうを選ぶのが悪いわけではありません。お子さんが大学進学を明確に決めているなら、高認は合理的な選択です。私が申し上げたいのは、費用差だけを理由に決めると、あとから「学歴が残っていない」ことに気づく場合がある、ということだけです。
当サイトが基準に置くN高等学校
当サイトでは、通信制高校を比べるときの基準としてN高等学校を置いています。理由を、この記事のテーマに沿って説明します。
法律上、全日制と同じ「高等学校」です
N高等学校・S高等学校・R高等学校は、学校教育法第一条に定められた高等学校です。公式サイトにも明記されています。つまり、卒業すれば全日制の高校と同じ「高等学校卒業」の資格が得られます。高認との決定的な違いが、ここではっきりします。
この記事の前半で見たとおり、高認で得られるのは大学入学資格であって、高校卒業ではありません。「高卒という学歴を残したい」が判断軸なら、選ぶべきは高校のほうになります。
中退したお子さんも、編入学で取り直せます
すでに高校を辞めてしまった場合でも、編入学という道があります。前の高校で修得した単位や在籍期間を引き継げる場合が多く、ゼロからのやり直しにはなりません。
編入学の手続きで必要になる書類は、主に次の3つです。
- 学籍・就学状況証明書
- 成績・単位修得証明書
- 教育課程表
いずれも、前に在籍していた高校に発行してもらう書類です。時間がかかることもあるので、検討を始めた段階で早めに問い合わせておくと安心です。
卒業に必要な条件
卒業要件は3つです。74単位以上の修得、3年以上の在籍、特別活動30単位時間以上。これは通信制高校に共通するルールで、N高だけが特別に厳しい/緩いということはありません。
正直に書きます|編入は初年度の負担が重い
いいことばかり書くつもりはないので、デメリットも先に伝えておきます。前の項目で触れたとおり、編入学・転入学では就学支援金の先引きが使えません。ネットコース普通科なら、初年度に373,000円を納入することになります。
支援金は後から支給されるので、最終的な負担額が3倍になるわけではありません。ただ、入学のタイミングでまとまった額が必要になるのは事実です。家計の準備という意味で、ここは早めに把握しておくべき点だと思います。
こうした金額や条件は、資料の募集要項に具体的な数字で書かれています。ネットで拾った情報ではなく、学校が出している数字で確認してください。資料請求は無料で、入学の義務もありません。
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よくある質問|高認と高卒資格の疑問4つ
高認に受かれば高卒になりますか?
なりません。法令上、高認の合格で得られるのは「大学入学資格」です。授与されるのも卒業証書ではなく合格証書で、高等学校を卒業したという学歴にはなりません。ここが最も誤解されやすい点です。
高認に合格した人の何%が大学に進学していますか?
公的な進路統計は確認できませんでした。文部科学省の資料に「大学進学のため」といった数字が出ていますが、これは受験時に本人が申告した受験の目的であって、実際の進路実績ではありません。進学率として紹介されている数字を見かけたら、出典を確認することをおすすめします。
高校に在籍しながら高認を受けられますか?
受けられます。令和7年度の出願者には、全日制に在学中の方が2,618人、定時制・通信制に在学中の方が3,645人含まれています。在籍したまま受験している人は、実際に一定数います。
通信制高校と高認を両方やる意味はありますか?
あります。高認の合格科目を、高校の単位として認定できる場合があるからです(学校教育法施行規則第100条第1号)。苦手科目を高認で先に片づけて、卒業までの負担を軽くする使い方ができます。ただし認定するかどうかは学校長の判断で、文部科学省も「受験前に必ず高校等に確認を」と注記しています。受ける前に、在籍校へ相談してください。
【今夜できる一歩】親が今日のうちにできる3つのこと
長い記事になりました。最後に、今夜のうちにできることを3つだけ挙げます。どれも5分から10分で終わります。
1つ目。お子さんに「3年後に何をしていたいか」を聞いてみてください。答えが「大学」ならば、高認は有力な選択肢です。「まだ分からない」ならば、高卒を取っておくほうが選択肢が残ります。責め立てるのではなく、雑談のなかで一度だけ聞いてみる。それで十分です。
2つ目。在籍していた(している)高校に、単位修得証明書が出せるか確認してください。この書類は、高認の科目免除にも、通信制高校への編入にも使います。どちらの道を選ぶにしても必要になるので、先に押さえておいて損はありません。電話1本で確認できます。
3つ目。通信制高校の資料を1つ取り寄せて、学費と卒業要件を実際の数字で見てください。ここまで読んで分かったとおり、高認と高校では残るものが違います。その違いに、いくら払う価値があるか。それは、実際の金額を目の前に置かないと判断できません。
お子さんの進路を決めるのは、今日でなくて構いません。ただ、材料は今日集められます。噂や検索結果ではなく、法令と学校が出している数字。それさえ手元にあれば、親御さんは落ち着いて選べます。
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